再建しますか?乳がん再建手術のシリコン入れ替え直前で私が諦めた理由

2019年4月24日、乳がんで全摘出した右胸の再建で、エキスパンダーとシリコンインプラント交換の手術を行う予定で入院しました。

手術日当日の25日朝、突然担当の先生が病室を訪ねてきました。

これから入れ替えようとしているシリコンインプラントが、フランスで使用禁止となったということを伝えるためでした。

手術は12時からで、3時間足らずの時間で手術をどうするか決めないといけません。

先生は手術を延期し、しばらく様子を見て決めればいいと勧めたのですが、私は再建手術を諦め、胸を膨らませるために入れていたエキスパンダーを外すことを選択しました。

今回はシリコンインプラントの現状と、私が再建を諦めた理由について書きました。

スポンサーリンク

現在保険適用となっているシリコンインプラント

私も今回のことがあり改めてきちんと調べたのですが、現在保険適用されているシリコンインプラントは1社のものだけのようです。

先生にも今使用できるものは、この1社のものしかないと言われました。

そのシリコンインプラントについて、まとめてみました。

2013年7月アラガン社製シリコンインプラント・エキスパンダーに保険適用が決定

それまでの保険適用は自家組織での再建だけでしたが、2013年7月にアラガン社製のシリコンインプラントとエキスパンダーが保険適用となっています。

従来、健康保険の適応は自家組織による乳房再建手術に限定されていましたが、2013年にアラガン社製シリコン性インプラント(人工乳腺)およびエキスパンダーが厚生労働省の薬事承認をうけ、保険適応での治療が可能となりました。
引用元:山梨大学医学部附属病院形成外科

全摘出後胸の筋肉の下に入れて生理食塩水を注入するものがエキスパンダーで、

ティッシュ・エキスパンダー

ティッシュ・エキスパンダー
引用元:http://nyubo-saiken.com/


その後シリコンインプラントと入れ替えます。
ブレスト・インプラント

ブレスト・インプラント
引用元:http://nyubo-saiken.com/

まず、乳癌切除の手術と同時あるいは術後に、エキスパンダーというシリコン製組織拡張器を大胸筋の下に入れ、それを3ヶ月~半年かけて少しずつ膨らませる(生理食塩水を注入する)ことで皮膚・筋肉の十分な伸展を図った後に、シリコンインプラントに入れ替える手技が一般的です。
引用元:東京女子医科大学形成外科

この両方ともアラガン社製のものになります。

シリコンインプラントの種類

シリコンインプラントの形状には3種類あります。

人工乳腺バッグ(インプラント)の形状は、「ラウンド」「アナトミカル」「ハイブリッド」の3種類。
引用元:ナグモクリニック

丸型のラウンド型としずく型のアナトミカル型、立つとアナトミカルで横になるとラウンドになるものがハイブリッド型です。

また表面構造には凹凸加工のあるテクスチャードタイプとスムーズタイプの2種類あります。

人工乳腺バッグ(インプラント)の表面加工は、ざらざらした「テクスチャードタイプ」となめらかな「スムースタイプ」の2種類。
引用元:ナグモクリニック

テクスチャードタイプの方が組織になじみやすく、被膜拘縮(周囲に薄い膜ができ、硬くなって縮む合併症)を起こしにくくなっています。

現在保険適用になっているものは、「アナトミカル型」の「テクスチャードタイプ」のみのようです。

現在、乳がんによる乳房再建手術において健康保険が適用されるのは、アナトミカル型のシリコンインプラントです。
引用元:E-BeC

私もこのシリコンインプラントを使用する予定でした。

インプラントでの再建に対するリスク

私が再建手術の説明を受けた時は、エキスパンダーについて感染や破損等があった場合除去することがあること、縫合できない場合は入れることができないこと、入っている間はMRIが受けられないことなどを聞きました。

シリコンインプラントを入れるリスクについてはアレルギーやシリコンの破損などの説明がありましたが、私には再建手術を行うメリットの方が大きく感じられました

もちろん異物を体内に入れるのですから、それ相応のリスクはあることはわかっているつもりでした。

でも多少のリスクを負うことで、胸がなくなってしまうことの喪失感や、人前で変わらず過ごせる自分でいられるなら、そのリスクは私にとって大きいものではありませんでした。

スポンサーリンク

手術当日の朝に知ったフランス当局ANSMの使用制限決定

医療関係者宛にアラガン社から日本国内での対応についての通知があったのは、2019年4月24日のようでした。

先生は25日の手術当日の朝、印刷したものを病室まで持ってきて、フランスの規制当局ANSMがアラガン社を含む複数メーカーの特定商品を使用制限したことを説明してくれました。

アラガン社のテクスチャードブレストインプラントとティッシュエキスパンダーは、CEマークの有効期限が切れたことでヨーロッパ市場で2018年12月17日から販売が停止していました。

世界有数のバイオ医薬品企業であるアラガン(Allergan plc、NYSE: AGN)は20日、テクスチャード乳房インプラントとティッシュ・エキスパンダー(皮膚組織拡張器)の販売を中止し、欧州市場での残りの供給を停止すると発表した。この供給停止決定は、フランスの規制当局である国家医薬品安全庁(ANSM)による強制的なリコール要求を受けた措置。また、販売中止は、これらの製品に対する同社のCEマークが期限切れによるものである。
引用元:CNET JAPAN

CEマークの失効と同時にANSMは強制的なリコール要求をしており、アラガン社は要求に同意していなかったそうです。

ちなみにスムーズタイプのインプラントについては、CEマークが更新されています。

重要なことには、アラガンのスムーズタイプのインプラントに対するCEマークはGMEDによって既に更新された。スムーズインプラントは今回の措置の影響を受けておらず、患者は引き続き利用可能である。
引用元:CNET JAPAN

私が全摘出と同時再建手術を行ったのは2018年11月15日で、その1ヶ月後には販売停止となっていたのに、私は知りませんでした。

退院後に生理食塩水をエキスパンダーに入れるため数回病院に通っていましたが、詳しい説明を受けた記憶がありません。

もしかしたらちょっとくらいは説明があったかもしれませんが、記憶にない程度の簡単な説明だったのだと思います。

先生自体もここまで大事になるとは、正直考えていなかったのではないのでしょうか。

そして2019年4月2日、ANSMはアラガン社を含む複数メーカーの特定のマクロテクスチャード及びポリウレタンブレストインプラント上市(市場販売)、流通、宣伝及び使用を制限することを最終決定しました。

詳しいことは私も説明できませんが、これによりアラガン社のテクスチャードブレストインプラントとティッシュエキスパンダーはフランスで使用禁止になりました。

ただ、ANSMはすでに埋入されているテクスチャードインプラントを、予防的に摘出することは推奨していないそうです。

日本での対応

フランスを除く欧州委員会タスクフォースは、「使用を制限するには科学的エビデンス(証拠や検証結果・臨床結果)が十分ではない」としていて、米国 FDA、カナダ保健省、イタリア保健省、英国美容形成外科学会(BAAPS)も「さらにエビデンスが必要」としています。

急なこともあり、現時点で日本では患者さんに十分な説明をした上で、再建手術を行うかどうか判断してもらうことになる、と先生は言っていました。

またいろいろな病院の医師に連絡をとってどう対応するか確認もし、近々行われる研究会などでも話し合う、と教えてくれました。

明確な方針が打ち出されるまでには、かなり時間がかかると思われます。

スポンサーリンク

ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)を発症する確率は?

では、ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)を発症する確率はどのくらいあるのでしょうか?

そもそも本当にシリコンインプラントがBIA-ALCL発症に関係あるのでしょうか?

BIA-ALCLと発症する確率について調べてみました。

ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)とは

BIA-ALCLは、乳房再建術または乳房増大(豊胸)術でブレスト・インプラント(ゲル充填人工乳房)を挿入された方に生じる、T細胞型非ホジキンリンパ腫の中でも稀な型の一つです。2016年のWHOの分類において、ブレスト・インプラント関連のALCLとして、他のALCLと異なるカテゴリーに分類されました(BIA-ALCL)。
引用元:一般社団法人日本乳癌学会

私はこの病名自体聞いたことがなかったので、先生から説明を受けた時は漠然とリンパ腫だからリンパの癌なんだろう、と解釈しました。

上の引用文を見ても、正直良くわかりません。

ただ、ALCL(未分化大細胞型リンパ腫)の中で「ブレスト・インプラント関連」に分類されているということはわかりました。

乳がんになるとまず心配されるのは「リンパへの転移」かと思います。

もちろん癌になれば転移が心配なのは当然なのですが、シリコンインプラントを入れることで、今度は別の、しかもリンパ系の癌になる恐れがあるというのは、先生の話を冷静に聞いているつもりでも、内心は穏やかでいられませんでした。

BIA-ALCLを発症する確率は?

BIA-ALCLを発症する確率はどのくらいあるのでしょうか?

現在発表されているBIA-ALCLの疫学的調査によりますと、罹患率はインプラント挿入症例10 万例当り、年間0.1 ~ 0.3 件と推定されています。本調査では、症例数が限られているため、発症率が過小評価されている可能性があります。一方、米国形成外科学会(ASPS)の報告では、米国における生涯罹患リスクは、1/30,000と推察されています。また、オーストラリアおよびニュージーランドからは、1/1,000-1/10,000と報告されております。しかし、これまでにアジア人(米国内に在住するアジア系住民を含む)での報告はなく、この違いは、地理的または遺伝的傾向を示している可能性があるとされています。
引用元:一般社団法人日本乳癌学会

パーセントにすると、疫学的調査では0.0001%〜0.0003%と推定され、米国形成外科学会では0.003%、オーストラリアおよびニュージーランドでは0.01%〜0.1%と報告がある、ということです。

私がいただいた資料を基に先生と一緒に計算した時は、約0.004%でした。

先生には日本ではまだ発症例がない、と聞きましたが、私にはひっかかることがありました。

それは発覚する時期です。

BIA-ALCLは他のALCLと異なり緩徐に進行します。BIA-ALCLは非常にまれな疾患であり、BIA-ALCL診断例で最も多いのは、遅発性・持続性の漿液腫のためにインプラント交換手術が施行されたときにリンパ腫細胞が発見された症例です。
引用元:一般社団法人日本乳癌学会

先生に尋ねたところ、日本でアラガン社のテクスチャードブレストインプラントが使用され始めたのは、5、6年ほど前からだそうです。

保険適用になったのが2013年なので、年数的にも間違いないと思います。

インプラントは約10年ほどで交換するので、日本ではまだBIA-ALCLが最も発見されるインプラントの交換時期が来ていない、ということになります。

私が再建手術を諦めた理由

ここはあくまでも参考までにお読みいただければと思うのですが、私は下記の理由から、再建手術を諦めました。

  • 私は大人しいタイプの非浸潤性乳管がん(ステージ0)なのに、点在しているため全摘出している
  • BIA-ALCLが発症する確率は、現時点で0.004%もある
  • 日本での発症例はないが、日本にはまだ発覚する時期が来ていない
  • 日本での対応が決まる、また代わりのものが出てくるのには時間がかかる


アメリカでは大人しいタイプの非浸潤性乳管がん(DCIS)については、手術しなくてもいいという学会発表があることも教えてくれた上で、外科の先生は手術を勧めました。

日本ではまだ手術で切除することになっているからです。

(これまでの体験談は次にまとめていますので、よろしければご覧ください。)

乳がん体験談まとめ

私は最初から心配なものはない方がいい、と考え手術しています。

そう思って全摘出しているのに、0.004%も癌が発症する確率のあるものを体に入れるのか

私の中ではNOでした。

日本での発症例がないのではなく、発覚する時期が来ていないことにもひっかかりました。

日本できちんとした方針が打ち出されるのを待っている内に、入れているエキスパンダーは1年という使用期限を過ぎるだろうと思いました。

もちろん、代わりのシリコンインプラントなんて、すぐには出てこないでしょう。

何より手術日当日に知ることになったことが、私には意味のあることに思えてならなかったのです。

最後に

今回は、手術当日に私が再建手術を諦めたことについて書きました。

手術を延期してもう少し情報収集したり、先生からの連絡を待つ方法もありました。

正直、これ以上会社を休んで迷惑をかけたくないという思いもありました。

それらすべてを考えた上で、私は再建手術を諦めることにしました。

エキスパンダーを取り出した後、手術の傷はほとんど痛みがなく、むしろ入っていた時の方が痛みがあったり、常に胸には重さや違和感を感じていました。

今の体の軽さを思うと、心も体も重いものを抱え込んでいたような気がします。

この記事を書くことで不安になってしまう人がいるかもしれないと思うと、書くべきかどうか悩みました。

でもきちんと知った上でこれからのことを決めてほしいし、知る必要のあることだ、と私は思っています。

少しでも参考にしていただけたら幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です