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宮城県塩竈市にある菅野美術館は、彫刻のためだけに作られた専門の美術館であり、建物自体も1つのアートワークとなっています。
ここに収蔵・常設展示されている彫刻は、ロダンやヘンリームーアなどいずれも近代西洋彫刻の巨匠たちの作品という、数少ないながらも質の高い見応えのある展示となっています。
今回はそんな菅野美術館に常設展示されている作品の中から、おすすめの作品をピックアップしてみました。
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菅野美術館(塩竃)のおすすめ作品①:オーギュストロダン作「カレーの市民のための第一試作」
知らない人はいない、あの「考える人」で有名なロダンの作品です。
こちらは「カレーの市民」という東京・上野の国立西洋美術館にも設置されている大型作品をつくるにあたって制作された試作品。
(上は国立西洋美術館の「カレーの市民」です。)
試作といえども、その服の隙間から延びる足の筋肉の盛り上がりや、1人1人の像が集まって形成した全体のシルエットがすっきりと無駄なくまとまっており、とても美しい仕上がりになっています。
そもそも「カレーの市民」は、ロダンが遅咲きながらも世間に認められた後にフランスのカレー市から、英仏百年戦争の際に街を救った英雄たちの像の制作を依頼されてできた作品です。
街を救った英雄がテーマなのですから、人々は華々しい身振りをした作品を期待していましたが、実際にロダンが作った作品は、絶望と苦悩に苛まれながら首に縄をかけた状態で敵陣の前に人質として現れた「英雄たち」を表現したものでした。
市当局はこの作品を当初は理解できず受け入れられなかったので、実際に除幕式が行われたのは完成から7年後のことでした。
そんな作品を生み出すための過程で生まれた作品だと思うと、さらに想像が広がるのではないでしょうか。
作品自体は試作なので小振りの像となっていますが、迫力のある1品となっています。
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菅野美術館(塩竃)のおすすめ作品②:ジャコモマンズー作「枢機卿座像」
こちらの作品は、イタリアの彫刻家ジャコモマンズーの手によるものです。
マンズーは1991年に亡くなっているので割と最近の人ですが、現代イタリアの三大巨匠のうちの1人と称せられました。
ヴァチカン市国サンピエトロ大聖堂の「死の扉」を手掛けたり、美術館と同じ宮城県にあるものですと仙台市の定禅寺通りにあるブロンズ像「オデュッセウス」が有名ですね。
(上は彫刻の森美術館の「衣を脱ぐ(大)」です。)
この枢機卿像の美しいところは、何といってもそのシルエット。
細部は丁度いい塩梅で簡略化された表現となっていますが、単純でかつずっしりとした量感のブロンズ彫刻であるにも関わらず、マントのひだが丁寧に描かれていたりすること、横から見た滑らかな曲線を描くシルエットが、この像をリアルかつ抽象的という相反する2つが見事に両立した作品にしています。
マンズーはサンピエトロ大聖堂で居並んだ枢機卿たちを見たときに、まるで立方体のようにみえ面白く感じたそうです。
そこからマンズーは枢機卿をモデルにシリーズ化して何作品も制作していくのですが、その連作の1つが菅野美術館に収蔵されたこの枢機卿像です。
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菅野美術館(塩竃)のおすすめ作品③:エミリオ・グレコ作「ルチリア」
受付からいざ展示室に入り、最初の方に現れるこの作品は、まずその圧倒的なボリュームにぎょっと驚かされます。
菅野美術館に収蔵されている作品は小ぶりなものが多いのですが、こちらは等身大サイズの半身像で、一目で強い印象を与えます。
顔は中東アジアかアフリカ系のような彫りの深い顔つきで、少しプリミティブな印象の像。
作者のエミリオ・グレコは南イタリアのシチリア島出身、量感豊かで明るく優美な表現が特徴の彫刻家です。
日本でおそらく1番有名な像は、仙台市を紹介する際にほぼ必ずその写真が使われるといいてもいい、「夏の思い出」という定禅寺通りに設置されている作品ではないでしょうか。
「夏の思い出」は実際にはありえないポーズだけども自然に見える体のひねり具合など曲線が美しい像ですが、それと比べるとこの「ルチリア」は少し武骨な印象を受けますね。
ただ横からこの像を見ると、その肘をついて顎を載せている腕と背中の量感が正面からこの像を見た時よりもより一層強く感じられます。
また体の部分は簡略化された表現だけれども、髪は繊細にその流れるような質感が表現されていたり。
いろんな角度から観察すればするほど新しい発見が得られる、とても見応えのある像です。
菅野美術館の所蔵作品ページはこちら → 菅野美術館所蔵作品
菅野美術館(塩竈)の建築がすごい!シャボン玉のような空間が神秘的!菅野美術館(塩竈)のアクセス・駐車場は?周辺のおすすめカフェも調査!菅野美術館(塩竃)のおすすめ彫刻作品のまとめ
菅野美術館に収蔵されている作品の1つ1つにはエピソードがあり、それを知るとさらに理解が深まりますね。
この美術館自体も、オーナー夫妻が1つの彫刻に魅せられて、そこから数々の彫刻をコレクションしていき、最終的にはそれらの作品を収めるこの菅野美術館という建物のコレクションを手に入れた、という物語があります。
絵画を見ることはあっても彫刻を見るという方はまだまだ少数派だと思いますが、ここにくればきっと彫刻の魅力に気づくことができるはずです。
現在は佐藤忠良展が行われておりそちらもおすすめなのですが、ぜひ訪れていただきたい季節は夏です。
夏の日差しが白い空間に差し込むその美しさは格別です。
ぜひ美術館の窓から塩竈の海が綺麗に見える、夏の晴れた日にでも訪れてみてください。